無料のRPAツール「Power Automate Desktop」、向いている企業・向いていない企業

2021.10.11

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はじめに

皆様は、マイクロソフトから提供されている「Power Automate Desktop」というRPAをご存知でしょうか。「無料で利用できる」ということもあり、これからRPAツールの導入を検討する方は、気になっているという方も多いのではないでしょうか。そこで本コラムでは、Power Automate Desktopについて、導入に向いている企業、向いていない企業を中心に解説します。
※本コラムの情報は2021年8月現在の公式公開情報(公式サイト、ドキュメント等)をもとに作成しており、必ずしも正しさを保証するものではありません。正式な情報は、必ず公式サイトをご確認ください。また、実際のライセンスについての情報は、マイクロソフトへお問い合わせください。

「Power Automate Desktop」とは?

Power Automate Desktopとは、マイクロソフトが提供するRPAで、Windows 10の利用者であれば追加料金なしで利用することができます。
2021年3月にマイクロソフトから無償提供が発表(外部サイト)され、この無償提供開始を機に注目を集めていますが、もともとは「Power Automate」というサービスの一部として、それより以前からサービス提供されていました。Power Automateを構成するのは、メール受信やスケジュールといったトリガーに従って、自動でタスクを実行する「クラウドフロー」やWEBブラウザやデスクトップ上のタスクを自動化、いわゆるRPAの機能を提供する「デスクトップフロー」などから構成されています。2021年3月に発表されたのは、この「デスクトップフロー」が「Power Automate Desktop」として、無償で提供が開始された、という内容です。

Power Automate Desktopを利用するためには、注意点があります。それは、マイクロソフトアカウントで認証する必要があるため、インターネット環境が必須であるという点です。インターネット環境がない場合は利用ができないため、注意が必要です。

無償版、有償版の違い

Power Automate Desktopは、無償で利用することができますが、できることに限りがあります。前述した通り、Power Automate Desktopは、Power Automateのサービスの一部です。無償利用の場合は、RPA機能のみ、有償利用する場合は、クラウドフロー等も含めて、Power Automateの他機能を使うことができます。そこで、無償利用と有償利用有償で具体的に何が異なるのかを解説します。

最も大きな違いは、スケジュール実行/トリガー実行機能の有無です。Power Automate Desktopをスケジュール実行やトリガー実行(特定のキーの送信や、PC起動、特定のメール受信などをトリガーに自動実行される機能)させるためには、有償のPower Automateのクラウドフローが必要です。Power Automate Desktopは、クラウドフローから呼び出して起動することを前提としているためです。

したがって、クラウドフローが利用できない無償利用では、Power Automate Desktopの自動実行はできず、実行時に手動で立ち上げ、実行する必要があります。RPAの大きなメリットのひとつとして、「就業時間に関係なく作業を進めることができる」ということがあります。
実際にRPAツールの導入で最大限に効果を発揮するためには、スケジュール実行機能は非常に重要な要素になります。無償の範囲では、この重要な要素となるスケジュール実行機能が使えないため、有償利用に比べるとデメリットとなり得ます。

その他の違いとしては、他者との業務自動化フローの共有が挙げられます。無償での利用の場合、作成したフローは個人のOneDriveに保存されるため、クラウド上で他者とフローを共有することはできません。共有するためには、作成者がOneDrive内に保存したフローを、そのたびに相手に共有する必要があり、手間がかかります。

一方で、有償の場合は、Microsoft365のデータベースであるDataverseにフローが保存されるため、クラウド上で共有可能です。
また、無償で利用する場合にできないこととして、集中管理があります。有償で利用する場合は、一元管理機能とレポートが提供されます。

本コラムで触れている無償/有償の違いの詳細情報については、こちら(外部サイト)をご確認ください。

Power Automate Desktopの導入の向き/不向き

今、RPAの導入を検討している企業の中には、無償利用ができるPower Automate Desktopの導入を考えているという企業もあるのではないでしょうか。無償で利用できることは大きなメリットですが、それ以外の点で注意すべき点がいくつかあります。そこで、Power Automate Desktopの導入が向いている場合と向いていない場合について、解説します。

まず、Power Automate Desktopの導入が向いている場合は、ある程度ITに関する知識に自信がある方が、個人で利用する場合です。個人で利用する場合には、無償利用のデメリットである、「他者とのフローの共有方法」や「集中管理ができない」といった点が問題にはならないため、スケジュール実行機能などを使わない場合であれば、十分といえます。

しかし、Power Automate Desktopのフローの作成には、ある程度ITの知識が必要になってくるため、個人利用であればすべての方に向いているというわけではありません。例えば、変数を使ったデータのやり取りやループ、条件分岐を行う際の条件の定義方法などは、IT初心者にはハードルが高く、また無償利用の場合はサポートが受けられないため、わからない箇所はすべて自力で調べることになります。そのため、スキルレベルによってできることに個人差が生じる上、手間がかかります。

逆に、導入が向いていない場合は、企業などの組織で横断的にRPAを導入したい場合やIT部門以外で導入したい場合です。特に他者とのフローの共有に煩雑な手続きが必要になると、せっかくフローを作成しても個人利用にとどまってしまい、うまく社内展開が進まない可能性が高まります。

また、無償利用の場合は、集中管理機能も利用できないため、社内でどのようなロボットが稼働しているのか、どこの部門で利用されているのかなどが把握しきれず、ガバナンスが効かない状態になります。この状態は、ロボットがブラックボックス化しやすく、野良ロボットの発生の原因になり得ます。さらに、現実的な運用を想定した場合に、スケジュール実行機能が利用できないと、実行毎に手動で起動する必要があり、非効率的です。また、IT部門以外では、前述のとおり、フロー作成方法の習得が難しく、サポートも利用できないため、「自ら調べる、自動化する」といった姿勢で取り組まない限り、展開が非常に厳しくなります。

Power Automate Desktopの課題

無償/有償利用問わず、Power Automate Desktopの最大の課題といえるのは、サポートです。

特に日常業務を扱うRPAツールの場合、手厚いサポートは欠かせません。操作でわからないことがあればすぐに問い合わせができることや、使いこなせるようになるまでトレーニング等でサポートを行うことはもちろん、機能改善、不具合の修正を迅速に対応できることも非常に重要な要素になります。

Power Automate Desktopの認識が高まるにつれて、有償でサポートを行う企業も増えてきていますが、使い方などのQAのみで、機能改善や不具合の修正などはマイクロソフト側の対応を待つ、というスタンスを取らざるを得ないのが現状です。

まとめ

RPAツールが無料で利用できるのは大きな魅力の一つです。自社のRPAの導入目的や運用体制、利用部門などを考慮し、Power Automate Desktopが自社への導入に向いているかどうか判断してみてはいかがでしょうか。

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アイコン_齊藤
ペンネーム りっぴ

大学卒業後、新卒でテリロジーに入社。EzAvaterの営業を担当。
出身地:神奈川県大和市
趣味:ピアノ、ゲーム
好きなゲーム:ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド、GHOST OF TSUSHIMA など

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